ワンダフルソロモンの指輪

 一ヶ月ほど前にid:mamorukさんからスティーヴン・ジェイ グールドの「ワンダフル・ライフ」とコンラート・ローレンツの「ソロモン王の指輪」をお薦めされたので読んでみた。

ワンダフル・ライフ

 ワンダフル・ライフはバージェス頁岩と呼ばれる、非常に状態のよい化石が出土する場所から出土した化石についての話を書いた本である。バージェス頁岩からはカンブリア紀の化石が出土するのだが、カンブリア紀というのは現在では見られないような変わった生物がたくさんいたようだ、ということが分かっている。例えば、オパビニアと呼ばれる生き物には目が五つあったそうだ。
 読んで見た感想として、著者のいろいろな主張の根拠が弱いように感じられ、個人的には納得感は薄かった。これはあまりしっかりと振り返りながら読まなかったせいもあるかもしれないが、この本にも出てくるサイモン・コンウェイ・モリス(バージェス動物群の再評価にも関わった研究者)が反論を書いていることからも、言葉足らず、もしくは根拠が不足している面もあるように思う。
 しかし、カンブリア紀の生物が(現代から見ると)異様であり、好奇心をそそるものであるということは間違いない。目が五つの生き物なんてパッと考えても全然思いつかない。(3つなら、ムカシトカゲがいるけど。退化してるけど。)
 読む順番としては、眼の誕生を読む前にこっちを読んだ方が楽しかったかもなぁ、という気もする。

ソロモンの指輪

 ソロモンの指輪は、カンブリア紀の化石についての本であるワンダフル・ライフとは打って変わって、現代を生きる動物についての本である。ローレンツ自身が様々な生物を育て、研究した結果として、そのエピソードや、ペットを飼うときには何を買えばいいか、というようなことが書いてある。
 1950年頃と、書かれた時期がやや古く、そのせいかなんだか牧歌的な雰囲気が漂う。個人的には、読んでいてドリトル先生を思い出した。動物に好き勝手させて人間がものすごい苦労をしているところが共通点かな。ただ、ドリトル先生が動物に対しては苦労を苦労と思わない一方、ローレンツはいろいろ後悔もありつつ動物に惹かれてやめられない、という感じ。アクアリウムに関する章で、「アクアリウムには循環的に生活可能な以上の魚を入れるな」と書いておきながら、後書きらへんで「あんなことを書きながら魚をたくさん入れたアクアリウムを作ってしまった上に水槽のガラスが割れちゃってえらいことになった」みたいな事が書いてあったりして、人間味にあふれている。
 カラスが、どれほど信頼している人間であっても、黒いものを手に持つとカラスを攻撃していると誤認して襲いかかってくるという本能を持つという点や、犬は降伏のポーズをされると本能的にもう攻撃できなくなってしまう(降伏された方の犬は、明らかに攻撃をする欲望があるんだけど、でもできない)が、攻撃力が高い上に同族を襲ってしまうような生き物は進化の途中で滅びちゃったんだろう、というような考察などは、面白かったしなるほどと思った。(鳥類には降伏というルールを持つ種族と持たない種族があり、近縁種でも状況が違って混ぜると大変な事が起こる場合もあるらしい。降伏した相手を攻撃してしまうとか。)
 小さい頃にシートン動物記やらドリトル先生やらを夢中になって読んでいたような人なら間違いなく楽しめると思うのでお薦め。